心にホットサムシング

 日本の夏の暑さが尋常じゃなくなっているような気がする。20世紀の記憶を留めている僕には、この暑さが異常事態に思えるのだ。主に21世紀をメインに生きている人にとってはデフォルトなのかもしれないが、熱中症が日射病と呼ばれていた時代から来た僕らには、昨今の夏は桁違いに暑い。

 なんとなく毎年、暑さのピーク時に40度を超える地域があるが、僕が学生時代の記憶では滅多に超えなかった気温だと思う。その辺は計測方法の変化(ないし進化)もありそうだが、それにしても体感として暑い。それに加えてここ数年では、雨が降るたびに各地を災害が襲ってるのも気になる。

 子供の頃に習ったのは、日本は温暖湿潤気候に区分されるということだ。いま僕が肌で感じるのはサバナ気候だ。インド亜大陸の大部分がそれに属しているのだが、彼の地に旅行に行った際の暑さはシンドかった。旅人は日中動き回らなきゃいけないのだが、できれば部屋でジッとしていたかった。

 でも、安宿の大部屋にエアコンなど入っていないので、日中は灼熱部屋となる。窓がガラ空きなので熱がこもってはいないが、涼しいということはない。そして、夜になっても気温が下がる気配がない。だから、旅行の序盤では夜は眠れなかった。昼間の熱が建物に蓄積されて、全く冷えないのだ。

 大部屋には知恵袋のような旅の先達がいて、眠れない夜の秘策を教えてくれた。彼女いわく「服を着たまま水シャワーを浴び、ずぶ濡れのまま寝る」というのだが、濡れた状態でベッドに横たわるのは気が引ける。でも、どうせすぐ乾く。それよりも、ひんやり感が残っている間に寝てしまうのだ。

 そんな眠れない夜の記憶が、ここ数年の熱帯夜で思い起こされた。20世紀末にインド旅行から帰ってきた時には、日本は夏の盛りだったが涼しく感じた。熱帯から温帯に帰ってきたという実感があったものだ。今はどうだろう。自分が行こうとは思わないので、インド帰りの誰かに聞くしかない。

夏の路面の陽炎は、道路工事でアスファルトを敷き直している作業を思い出す。