セイム・セイム・セイム

 大学時代、ラグビー部に双子がいた。本人たちが言うには二卵性とのことだが、外見はほぼ同じ人間だ。ただ、性格は全然異なる。どちらも極端に困った性格ではないが、当たり障りのない人間というワケでもない。ちょっとクセはある。そのクセが分かると、同じ顔でも見分けがつくようになる。

 とは言え、初見からしばらくは全然見分けつかなかった。ひとつ年上なのだが、ひとりは浪人しているので同級生だ。だから、1年生の役割分担などで絡んだりする。部活の1年生というのは奴隷と表現されるように、確かに上級生からこき使われる。その点、双子の彼は僕らに寄り添ってくれた。

 そんな時に、もうひとりの上級生の方の双子が表れるとややこしい。ちなみに上級生の方が弟で、浪人した同級生の方が兄だ。部活では学年がモノを言うが、ひとつ上の学年の人と双子の兄はタメ口で話していた。そこまでシビアではない。そんな感じなので、僕は双子の兄とは敬語で話していた。

 でも、それには事情がある。一緒にいる機会も多いので双子の兄とは仲良くなるのだが、油断はできない。双子弟と区別がついてない段階では言葉遣いは要注意だ。いま話しているのがどちらだか分からないときがあるからだ。同じ寮に入っていたので、最初はとりあえず朝の服装で区別していた。

 せめて髪型くらい変えてくれれば良いのにと思うのだが、ふたりとも似たような髪型にしたがる。しかも伸びるタイミングが同じなので、同じ日に同じ床屋に行ったりする。特に仲良しではないので別々に行くのだが、そうすると床屋の人を驚かせてしまう。さっき切ったのにもう伸びてるからだ。

 同じ寮で1年生活していたので、最後の方は見分けがつくようになった。兄貴の方が比較的マジメで、弟はチャランポランなところがあるのだ。それは、翌年になってハッキリする。ひとつ上の学年だったはずの弟が、僕らと同じ学年になったからだ。つまり留年である。体育会系では珍しくない。

特徴的な木を目印にしておくと、その近くに同様の個性的な木があったりする。