ヤングアドベンチャー

 あまり冒険家の資質がないと思われる僕だけれど、中学生の頃に仲間と自転車で「近所の川を下って東京湾まで出よう」とプチ冒険に出たことがある。なんとなく夏休みで時間を持て余していたので、ちょうど良い暇つぶしだ。当時は行動半径が狭かったので、未知の道を走るドキドキ感があった。

 行きは元気良く進むが、何しろ知らない道だし目的地までの算段も立っていない。河口に近づくと川幅も広くなり、このまま進むと港湾施設の敷地とかで立ち入り禁止になるんじゃないかと不安に思った。何が不安かと言うと、仲間が立ち入り禁止でも「入っちゃおうぜ」と言いそうだったからだ。

 僕はヤンチャに付き合うのがダルいのだ。そう言う場面になると急に不良ぶるタイプの人間がいる。中学生なんて、もっともカッコつけたがる年代だ。そして、不良ぶるヤツの特性として逃げ足が速い。立ち入り禁止の施設に入っても、そいつだけは逃げ切る。ノリ遅れている僕は捕まるタイプだ。

 小学生の頃だが、近所のゴルフ練習場で敷地外にはみ出したボールを拾いに行った。それは捨ててあるようなボールなのかと思って無心に拾っていたのだが、大人の男が現れてみんなが逃げ出した。僕は逃げ遅れて、その男に詰められて泣きながら詫びた。他の仲間も戻ってきて一緒に謝っていた。

 帰り道で、みんなに「ちゃんと逃げろよ」と注意された。逃げるような悪事なら初めから関わりたく無かったが、そんなことを馬鹿正直に言う元気もない。ただ悔しさが込み上げて、さらに追い泣きした。その頃からヤンチャに関わるとロクなことがないと思っている。あの面白さが理解できない。

 話を戻すと、さっきの河口には割とゴールっぽい空き地があった。湾を見渡せる小さな船着場のようなコンクリートの平らな場所だ。そこの見晴らしは結構良かったので、近所にあったら秘密基地にしたいような立地だ。ただ、荒くれ者どもが記したと思われるペイントがそこら中に施されていた。

いまだに川沿いをジョギングしている僕は、あの川下りの続きをしたいのか。