世界をどんどん狭くする

 酒場でのやり取りで、なんとなくコチラの意図と店主の世界観が「違うなぁ」と感じてしまうと、もう「やれんな」と思い詰めてしまう時がある。その感覚は誤解かなと思うこともあれば、コチラの期待が過剰に強すぎるという場合もある。でも、結局は合わないのだ。そう感じたら撤退あるのみ。

 とは言え、関係性をパタッと閉じる方が楽なので、僕自身が楽な方に逃げているかの確認は必要である。この場合は、僕は逃げていない。最終確認として「先日のやり取りに関して思うところあり」という最後通牒はしていない。それは、するつもりもない。酒場では、いつか来ることなのだから。

 僕は、仕事に関しては結構自分に厳しいと思っている。だから、先方に投げかけた仕事に関しても、ある程度のシビアな厳しさは受け入れる覚悟がある。ほとんどの客からダメ出ししかされない業務を何年も続けてきたので、その耐性は低くないつもりだ。それでも、時折そのキャパを超えてくる。

 まあ、僕が提案した案がスベッだけのことではあるのだ。それでも、そのスベり方に関しては配慮してほしいのだ。かなり大きな優しさで提案したものに対して、秒単位でのスベらせは愛がなさすぎる。かなりの部分を優しさで補っている関係性の中で、その対応は僕の深部にグッサりと刺さった。

 やはり僕はすでに「老害」の域に達している存在なのだ。いまの気分では、その店には二度と行きたくはない。その上、そんな嫌な気分を上塗りするように僕の好きな野球チームが無惨に負けている。ロクなもんじゃない。そんな諸要素が同時多発的に僕に降りかかり、ひとつの行きつけが消えた。

 まあ、毎日のように飲み屋に顔を出していれば、こんな塩対応で「二度と行くもんか」と思うことは多々ある。この店でも、こんな風に降りようと思ったことは何度もある。今回の決意がいつもに増して強いわけじゃない。ただ、タイミングが合わなければ、本当にひとつ酒場を失うかもしれない。

おそらく地滑りのあと。スベると恥ずかしくてトゥーシャイボーイになる。