イージーゴーのその後で

 お金への執着が薄いので全然金持ちにはなれないが、決してお金が嫌いなわけじゃない。あれば使い道はいくらでもあるが、それを稼ぐことへの集中力が足りない。50を目前にした身としては、ある程度の蓄えがないと心配な部分はある。そんな時に、ふと「宝くじ当たんねえかな」と思うのだ。

 よく聞くのは「あんな大金を手に入れたら人生おかしくなる」という意見だ。大人の分別ある意見のような気はするが、その真意は分かっていない。どうやら家族が崩壊するとか、人を信じられなくなるとか、そういったパーソナルな問題らしい。でも、実際に当たって家庭崩壊した人を知らない。

 そもそも当たった人を見たことがないし、億単位のあぶく銭を手に入れた人は自分から教えてくれないだろう。もしかしたら、すでに何処かで出会っているのかもしれない。前職の社長が宝くじマネーで会社を立ち上げたというウワサはあったが、その事実確認をする前に退社したので分からない。

 まあ、その社長に関しては、仕事への姿勢がなんちゃって感があったので、元社員の連中が嫌味で「宝くじが当たって始めた会社ごっこ」だと揶揄していたのだろう。僕に置き換えて、果たして宝くじで手に入れたあぶく銭で会社なんて立ち上げるだろうか。むしろ、なるべく働きたくないだろう。

 僕があぶく銭でやりたいことで、真っ先に思いつくのが「アパート経営」だが、リアリティのない想像は具体的な像を結ばない。単に不労所得永久機関を作りたいなという安易発想である。どうしても不動産を手に入れようと考えてしまいそうだが、税金のことを考えると借家の方が良さそうだ。

 最近のニュースで酒場の話題に上るのは、地方都市の誤送金問題である。誰でも急に預金残高が爆裂上がりしていたら、自分だけに起こった「神さまのイタズラ」的奇跡だと思うような気がする。それが一瞬で「夢でした」と言われたら落ち込みそうだ。それは確かに「人生おかしくなる」だろう。

ちょっとしたラッキーで良い思いをすることへの潜在的な恐怖があるらしい。