スーパースーパーウォーカー

 家で飲もうと思ったときは、スーパーに行ってしこたま酒類を買い込んでくる。酒コーナーのラインナップが充実したスーパーが、近所に何店舗かある。酒専門のリカーショップの方が選択肢は多いのだが、自分の好みで比較するとスーパーの方が安くて便利だ。今日もそのスーパーで買い込んだ。

 芋焼酎の四合瓶を選んでいると、棚の反対側にいた店員の会話が聞こえてきた。パートのお姉さんから「先生」と呼ばれてやってきた社員と思しき男性が「また盗られたか」と呟いていた。どうやら酒コーナーでは、窃盗の被害が相次いでいるらしい。興味深く思いつつ、更なる情報を探っていた。

 何を盗られたとか、犯行時刻の目星はついているのかとか、怪しい人間を見かけなかったかとか、僕の中の捜査官が手帳片手に聞き込んでいる。でも、それに対する回答は得られない。実際は焼酎売り場で聞き耳を立てているだけだからだ。そこで得られた情報は、いまだ店は無策だということだ。

 あとひとつ、パートのお姉さんが呼んでいた先生という呼び名が気になる。その男性が彼女の教育係ということだろうか。もしかしたら、教師を辞めて勤めたスーパーに元教え子の母親がいたとか、などと想像してしまう。そんなことを考えていたら、何も決めずに棚の前で惚ける怪しい中年男だ。

 こんなところでウロウロしていたら窃盗犯と疑われてしまう。店員に怪しまれる前に、当初の目的通り飲み物を決めよう。日本酒と芋焼酎と有名なシソの焼酎を選んだ。我ながら惚れ惚れするような良いラインナップだ。これにビールを足して店を後にした。今夜の晩酌はとても充実しそうな予感。

 そういえば、クルマでこのスーパーに乗り付けたときに、停車時にナビが「盗難多発地域です」と報せてきた。我が町はどこにいても盗難多発地域なのだが、店員の話を聞くと余計に治安の悪さを感じてしまう。酒を盗むなんてタチの悪い盗賊だ。盗んだ酒を飲んでも、気持ちよく酔えないだろう。

ジョギングもいいけれど散歩も日課に加えたい。仕事する時間がなくなるが。