インターフォンを鳴らすのは誰

 我が家の周辺は、クルマのナビが駐車時に「盗難多発地域です」と忠告するような民度の低いエリアのようだ。市内の中では比較的治安は良いところだと思うのだが、ナビの音声案内のデータ上ではそう判断されていないようだ。静かな住宅街ではあるのだが、日常に潜む悪意を感じるときはある。

 ある時期、やたらと訪問販売が多い時があった。リフォーム系の注文を取るため、とにかく家に上がろうとする。そんなヤツらのアタックを躱すために、我が家では家の問題は決まった大工に頼んでいるという決め文句を打ち合わせたりした。でも、とっさに出てこなくてダラダラ粘られたりする。

 コロナ禍以降はあまり訪問販売の襲撃を受けていない。もしかしたら、そういう商売をやっていた元が倒産したのかもしれない。訪問販売で強引に取り付けた注文をパッと仕上げてサクッと高額請求して逃げるような商売だから、彼らもギリギリでやっていたハズだ。現状はさぞ厳しいことだろう。

 むかしはもっと謎な訪問販売がやって来た。急に家に来て「なんでもいいから買ってくれ」とハンカチを千円で売りつけていったヤツもいた。当時、僕は中学生くらいのハズだ。デカかったので見えなかったのかもしれないが、子供にたかる神経が理解できない。しかし、なぜ買ってしまったのか?

 訪問販売と長時間話していると、ヤツらが勝手に話しているだけなのに「長い時間話をさせてしまった」という加害者意識が生まれてしまう。これは僕の経験上の話で、誰もがそう思うのかは知らない。ただ、ハンカチを買った時の僕は、とにかく何をしてでもその訪問販売員に帰って欲しかった。

 この経験から、僕は買い物を自由意志でできない状況を作れないのだ。営業をしていたときも、客先では客の意思を尊重する。僕の持って行った商品を気に入らないようなら「買わなくてもいい」と思うのだ。僕が買わせる行為をした瞬間、ヤツらと同じに成り下がってしまう。僕は呪われている。

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外から丸見えの公園のトイレ。この公園の横には仕事サボりの営業車が並ぶ。