でおくれテクノロジー

 家電の技術革新のような出来事を生まれてから何度か経験した。最初に出くわした新技術は「ビデオ」だった。当初はVHSとベータマックスが覇権を争っていたそうだが、ごく初期のビデオレコーダーは高価だったので我が家に採用されることもなかった。たまに、友達の家で見かけるくらいだ。

 それと時を同じくして、家庭用ゲーム機も販売されるようになった。ファミコン以前に「カセットビジョン」というゲーム機が発売された。その2年後にファミコンが販売されて旧型機の印象になってしまった。でも、発売当時は「家がゲームセンターになる」ようなスゴいことのように思われた。

 ビデオもゲームも、当時の僕は友達の家で見たりやらせてもらったりするものだった。僕が最もビデオを必要だと感じたのは、日曜日に少年野球で出ている間に「キン肉マン」のアニメ放送があったことだ。僕が初めて単行本で集めた漫画がキン肉マンだったので、アニメもすごく観たかったのだ。

 そんなに憧れたビデオだったが、全家庭に普及したくらいのタイミングでやっと我が家にも導入された。ただ、いざ手に入れてみると、誰も使わないものだ。深夜の音楽番組を僕が録るくらいで、他の人が使うことはまずなかった。買わないのには理由があって、それは必要がないからだったのだ。

 家庭用ゲーム機に関しても同様なのだが、「スーパーマリオ」がものすごく流行ったので、いよいよ僕の「買って買って」病に歯止めが聞かなくなってきた。何かの記念日的なプレゼントで、中学生になるちょっと前に買ってもらった。でも、中学生になり生活が変わるとゲームは放って置かれた。

 結局「時機を逃す」と楽しめないのである。流行は、最先端にいる者にしか最高の楽しみを与えないのだ。その頃から独自路線を目指すようになったのかもしれない。少年ジャンプじゃなく劇画アクション連載の単行本を買ったり、バンドブームじゃなく様式美メタルを愛したのも僕なりの反抗だ。