きみの前世は魚か鳥か

 僕には特に趣味と呼べるようなものがない。そんなもの要らないと思っているのだが、趣味が人生を豊かにする側面はあるかもしれないとも思う。ただ、じゃあコレを趣味にしようと即決できるわけもない。いろいろ試して自分に向いているとか、とにかく楽しいとか、そうやって見つけるものだ。

 ある時期までは地元のラグビークラブに所属していたので、休日は無条件でその活動に没頭していた。いや、没頭というよりもライフワークのようなもので、その地域の体育課の手伝いなどにも駆り出されたりして、生活のサイクルに取り込まれていた。多少の思考停止感はありつつもラクだった。

 そんな日常も唐突に終わりを迎える。詳細は省くが、端的に言えば人間関係の破綻である。それによりクラブから離れた僕と、同時期にラグビーから離れた数人で飲んだ時に、どうせヒマなら「釣りでもどうか」と誘われた。僕が趣味にしたいことリストの上位に釣りがあったので、当然同意した。

 その時、僕が考えていた釣りは、渓流でのルアーフィッシングだ。フライでも構わないのだが、行きつけの酒場のマスターがフライフィッシャーなので、あまりその世界を知っている人がいない趣味にしたかったのだ。誘ってくれた友達は両方できるので、とりあえずは渓流から始めることにした。

 最初のうちは管理釣り場が多かった。そもそも僕らは、渓流の釣り場を知らない。釣り場の情報を得るために雑誌を読んだり、釣具屋で情報を拾うような熱心さが足りない。そのメンバーでしか行かないし、予定が合わなければ行かない。ラグビーの頃のクセというか、団体行動が身についていた。

 そのうち「食べられる魚が良い」と言い出すようになって、海釣りに移行した。僕は渓流が好きだったので、海釣りには気乗りしない部分があった。でも、遠出は楽しいし海は気持ち良い。必ず船酔いで吐くので体力的にツラいが、釣行自体は好きだ。とは言えソレは趣味と呼べるレベルではない。

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近所の用水路では日々老人がヘラブナ釣りに励んでいる。最も身近な釣り場。