夜桜見ながら罵詈雑言

 昨夜は酒場の仲間と歩きながら、夜桜を見て帰った。酒場でしこたま飲んだ後なので、缶チューハイ片手にプラプラと歩きながら、つい言葉が荒くなってしまった。正論で人を詰めるのは良くないことだと思いながら、どうしても飲酒により伝えたいと思い込んでしまったいくつかの言葉を放った。

 まさに、文字通り人間に向かってぶん投げるように言い放ってしまった。しかも、淡々と。話しながら「何で止まらないんだろう」と不思議なほど、彼への言葉が次から次へと垂れ流される。ほとんど言葉の在庫が尽きた頃、お互いの家に別れる交差点に着いた。そこで、やっと言い過ぎを詫びた。

 完全な人格否定だったかもしれないが、どれだけ言っても「響かないだろう」という気もするのだ。他人から言われて変われるのなら、僕だってとっくに変わっている。他人からの影響なんて微々たるものだ。耳心地の悪い言葉も、喉元過ぎれば何とやらだ。そう言い聞かせてみるが、少し心配だ。

 そして、例によって内容の細部は覚えていない。どんな言葉が刺さったり、または単に傷つけてしまったのか分からない。ほとんど一方的にコチラの意見だけを伝えたが、彼からの反論は全部論破してしまった気がする。脆弱な言い訳だったので返す刀でぶった斬ったが、やはり斬るのは良くない。

 正義というナイフは人を刺す、かつてタモリさんがバラエティ番組でポロッと漏らした金言である。その時に感心したはずの僕が、その言葉通りに飲み仲間をひとり刺した。言った直後は溜まっていたものを全部吐き出したので気分が良かったのかもしれないが、直後に後悔の念が押し寄せてきた。

 朝起きた直後は、そんな昨夜の気分を引きずっていた。後ろめたさを覚えつつ、なんとなく重い気持ちを引き剥がして寝床から起きた。その後、予約した歯医者で治療を終えたら、気分が晴れてしまった。昨日の件を詫びるメールを送ろうと思ったが、後ろめたさが消えたので本心から詫びれない。

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僕らの桜並木はただ今満開。ここの夜桜の下で中年をひとり詰めてしまった。