駅前留学は突然に

 数年前の夏前に野外フェスを観に行った時、通りすがりの外国人女性(僕の母親と同年代と推定)から「アイ・ラブ・ユア・シャツ」と言われた。話しかけられたというより、瞬発的に僕のシャツを見て出た言葉のようだった。それに対して僕は、半笑いでエヘッとだらしなく振り向くだけだった。

 その言葉への返答の正解は分からないし、半笑いでもリアクション的には問題ないと思う。観客として行った場所で急にクイズを出されるようなもので、そんな準備はしてない。そうは思うけれど、あの時のシャツを着るたびに反省してしまう。もっと友好的でヒネリの効いた返しはなかったかと。

 ちなみにそのシャツは、アメリカの幸せなファミリーが過ごすホリデーの群像的なイラストがコラージュされている。パジャマの柄みたいなプリントシャツで、この柄にひと目ぼれして購入した。だから、そんな柄のおかしみを理解してくれた人に対して、そのセンスへの同調を伝えたかったのだ。

 僕は英語の能力はサッパリで、映画を字幕で観ると頭が痛くなる。でも字幕でしか観ない。得意ではないのだが、言語へのリスペクトのようなものがある。それは英語に限らず、すべての人の母国語に対して興味はある。でも、聞くのも話すのも日本語オンリーだ。オンリーは英語だが気にしない。

 そんな言語能力(どんなだ?)の僕なので、不意の英語に対して上手に返せないのは仕方ないと思う。ただ、返せていたら僕も彼女もちょっと幸せだったというだけだ。それに期待してしまうのは、そんな経験があるからだ。かつて同じラグビークラブにいたイギリス人とのやりとりを以下に記す。

 日本で英語教師として働いていた彼は、バスク地方出身の彼女と同居していた。その家でカードゲームをした時に僕が計算を間違えた。そこでポロッと「アイ・アム・クレイジー・カリキュレーター」って言ったらウケた。そして、スペイン人の彼女に「お前より英語が上手い」などと言っていた。

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街で外国人に話しかけられることは滅多にないが、準備しておいた方がいい。