旅先で輝くシャインたち

 最初に就職した会社が、僕の貧弱な履歴の中ではイチバン規模の大きな会社だった。食品メーカーの営業だったが、そこで学んだのは会社での振る舞い程度のことだった。業務以外に会社にはイベントが結構ある。若いうちはイベントを手伝う側なので、そういう雑務に奔走させられることになる。

 そんな中で、何よりも時間を取られるのが社員旅行の幹事だ。これは持ち回りで、若手のうちは運営スタッフ的な役回りをやらされ、後々に必ず幹事長をさせられることになる。旅行代理店と打ち合わせたり、当日の宴会を仕切ったり、席の配置に気を使ったり、何ひとつ楽しめない役回りである。

 僕は確か入社2年目に幹事をやったのだが、旅行先は前の幹事が決めているので、僕らの業務はその旅行先での宴会のアテンドなどだ。あとは次の年の旅行先を決めることで、この時の幹事長が頑張って北海道旅行を決めた。その会社では「飛行機禁止」と言われていたので、画期的なことだった。

 社員旅行での飛行機禁止は、割と古い会社ではよく聞くルールだ。社員のほとんどが同じ飛行機に乗って事故に遭ったら、会社が終わってしまうからだ。そのルールを変えたからと言って、翌年の幹事からは面倒がられるだけなのだが。ちなみに僕らが幹事の時は旧常磐ハワイワンセンターだった。

 僕がその会社で社員旅行に行ったのは3回だけだ。3年で辞めてしまったからだ。北海道旅行には行った。それが最初で最後の北海道だった。熊牧場くらいしか記憶にないが、とにかく毎年社員旅行の時は僕のギャグが謎に冴える。あの冴えが通常業務でも発揮されていたら、辞めていないだろう。

 食品メーカーなので、営業や事務方と製造部門がある。普段の僕は製造部門と接点が少なかったので、社員旅行で久しぶりにちゃんと話すことになる。製造部門の面白リーダー的な人の近くに行き、笑いの競演となる。あの楽しさだけで旅行に行った甲斐があった。だから、旅の中身は覚えてない。

若い頃は雑で、旅先の食事の記憶も曖昧だ。当時は映えの価値観もなかった。