マッコリ無限ループの夜

 もう10年以上前、近隣のクラブチームでラグビーをしていた頃、英語教師として働いている外国人のメンバーが何人か在籍していた。同年代のオーストラリア人とは話が合ったので、よく飲みに行っていた。そのうち、彼の英語教師仲間である別の知り合いも何人か同席するようになっていった。

 オーストラリア人のTは日本語が堪能だったので、日常会話には困らなかった。むかしから「外国人にとって日本語は難しい」と聞くが、Tを見ている限りそれは思い上がりなんじゃないかと思えてくる。それくらい流暢だ。Tには日本人の彼女がいた。言葉を覚えるには恋人を作れということか。

 ただ、彼とよく行動を共にしていたイギリス人のJは日本語が苦手だと言っていた。Tを介して、英語を通訳してもらって聞いた言葉だ。そのJにも彼女がいると言う。韓国人だそうだ。その言葉を真に受けた僕は、韓国からの留学生か何かで、日本で一緒に働いている人だと思って認識していた。

 一緒に飲んでいる時にJが、その彼女と電話していた。途中で「話してみて」と電話を渡された。彼女を友達に紹介したい願望というのは万国共通なのだろうか。僕にはあまりない感覚だが、そういうことをする知り合いは何人もいた。特に話すことも思い浮かばないまま、Jの携帯を受け取った。

 そこでさっきの話を思い出し、韓国語で挨拶した方がいいのかなと考えて「アニョハセヨ」と言ってみた。すると日本語による怪訝そうなリアクションが返ってきた。何か変だと感じる間も無く、僕は無邪気に韓国の話などを聞こうとしたが、返答がシブかったので電話を代わった。どういうこと?

 大きな勘違いとして、僕は彼女を勝手に韓国から来ている人だと思っていた。でも、ずっと日本に住んでいる韓国の人も大勢いる。そこを読み違えていた。そして、さらに僕の偏見として、外国人と付き合う人は根っから陽気で明るい人と思い込んでいた。先入観というのは恥ずかしいものである。

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ハトの餌に「やり」は禁止という意味にも取れるので、改行には気を使おう。