その男の名前を追え

 かつて、転職の合間に時間を持て余した僕は、ビデオ屋で映画を借りまくっていた。映画を観ることを趣味として定着させられなかった僕は、この空き時間を利用して足りない映画情報を埋めるべく、たくさん観まくった。最近のヒット作から遡って、その時期の注目作をコンプリートしていった。

 当初、洋画は役者の顔の区別がつかなかったが、本数を重ねるうちに分かるようになる。中学生のころはトム・クルーズチャーリー・シーンの区別が付かなかったので「トップガン」と「プラトーン」は同じ役者がやっていると思っていた。学生時代、映画にハマれなかった理由はこの辺にある。

 仲間の中には、映画好きが1人はいるものだ。映画好きの度合いの差こそあれ、彼らが等しく「シブい」と評する俳優がロバート・デ・ニーロである。顔の区別がつかない頃の僕でも名前は聞いたことがある。でも、当然ながら顔はわからなかった。英語で話される芝居の上手さも当然わからない。

 その名前だけ知っているデ・ニーロを掘ってみようと、関連の出演作をまとめているコーナーで少しずつ借りていった。ギャング物が多く、また犯罪者の役も多い。マーティン・スコセッシ監督の作品に高い頻度で出ており、その中でもキャリア初期に当たる作品「タクシードライバー」が有名だ。

 だが、僕がロバート・デ・ニーロと聞いて真っ先に思い浮かぶのは「フォークダンスDE成子坂」だ。彼らの「DE」はデ・ニーロに因んで名付けられたと聞いたことがある。ネットで調べたところ事実ではないようだが、僕の中では彼らとデ・ニーロが紐付けられている。あとはどーよのテルか。

 名前で追ったわりに、意外と印象に残っていない。同時期にまとめて観てしまったから、似た傾向の世界観に食傷気味だったのかもしれない。パッと思いつくところでは、「マイ・インターン」と「ミート・ザ・ペアレンツ」だ。長いキャリアを積んでいる彼の代表作とは毛色が違うかもしれない。

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公園遊具のスペースシャトル。宇宙モノの映画では「オデッセイ」が好き。