粗雑なファーストコンタクト

 僕は今まで9回しか飛行機に乗ったことがない。僕の年齢でこの回数は少ない方だと思うのだが、僕の親世代には生涯1回も乗ったことがない人もいるだろう。僕の両親はなかったと思う。現在では格安航空会社が進出しているので、飛行機を使うハードルは下がっている。ただ、使う機会がない。

 僕の挙げた9回というのも往復の行程を足しているので、旅行の機会で言えば4回ということになる。往復なのに1回多いのは、トランジットというヤツだ。インドで10週間すごした後、タイ経由で帰る際に1週間滞在したので、その分を計上した。タイには良い思い出しかない。また行きたい。

 初めての海外旅行がインド旅行だったのだが、飛行機にも不慣れな上に言語も覚束ない。仲間から「英語が通じるよ」と言われていたものの、僕は英語なんて話せない。授業で習ったことは覚えていないし、英語と言ったらメタルの曲名くらいしか出てこない。まあ、それは意外と役立ったのだが。

 僕は手続き関係が苦手で、航空券をどのように購入したのかをあまり覚えていない。最初の飛行機体験は大学1年の夏休みに、大分でラグビー場を作る手伝いに呼ばれて行ったことだ。ほとんど休みがない部活の数少ない休暇が消滅したのはショックだが、それでも未踏の地の楽しさが大きかった。

 その大分への招集は急だったので先輩に航空券の買い方を聞くと「生協で売ってるから」と、新興宗教の勧誘のように慣れた手順であっという間に買わされた。空港や飛行機内のことはすっかり忘れているが、電車で目的地に向かう風景はボンヤリ覚えている。冷房はなく、窓は開け放たれていた。

 目的の駅に着く頃には日が暮れていたので、田園風景の中に唯一の明かりとなる電車に虫がたかってくる。高速で飛び込んできたカナブンが同行者に激突したのを笑って見ていた。あんな長閑な夏休みを過ごしたことはなかったと、後になって思い出す。当時は嫌々だったが、今では良い思い出だ。

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その時は当たり前だと思っていることが、後に大切な思い出になったりする。