まぼろしの単位

 大学時代のことは、部活の周辺以外あまり覚えていない。授業のことも全然覚えていないし、何を勉強したという実感もない。ただ、単位を取って留年しないようにしていた。過不足なく、最低限の単位を取って卒業した。授業やテストは苦痛でもなんでもなかったが、ゼミだけはイヤな思い出だ。

 ゼミと言っても少人数のクラスで、卒業年次の卒論を担当する講師との関係性を深めるための科目に思えた。必修単位なのだが、授業と言ってもディベートのうようなことをやらされるだけだ。年に数回、自分がテーマを発表して、それに対して質疑応答があり、そこで完全にやり込まれてしまう。

 ハッキリ言って部活しかしたくないのだが、ゼミは逃げられない。他の授業は寝ていても文句は言われないし、寝ているから文句も聞こえない。少人数のゼミで寝ることは、自分の胆力を試すようなものだ。同じゼミの誰かが発表しているのを無視して、自分だけ意識を遮断するのは少し心が痛む。

 あのゼミで勉強になったことは、何も準備しないでプレゼンすると地獄を見るということだ。もちろん、僕だってそれくらいは想像がつく。とは言え、部活しか考えていなかった僕には、ゼミの発表の準備という余力は残されていないのだ。僕は勉強するために大学に入ったわけではないのだから。

 よくこんな考えで卒業できたものだと思うが、それなりに単位取りには頭を使ったのだ。今では、あの頃のシステムを忘れてしまっている。時間割は学生の履修した科目によって変わるので、個人で授業のスケジュールを管理していたわけだ。履修したことをコロッと忘れて落とした単位もあった。

 今でも、あの綱渡りの単位取りが思い起こされ、夢で見る。今日こそは授業に出ないと、出席日数でアウトになる。それなのに、その授業をやっている教室が分からない。夢なので、校舎が現代の新校舎に変わっている。その夢で、僕は授業に出られたことがない。だから留年して何度も夢に出る。

f:id:SUZICOM:20200228130442j:plain

理系の大学の中で数少ない文系学科の僕。白衣の研究者には憧れたものだ。