最弱のポリスアカデミー

 僕は学生時代、競馬場で警備員のアルバイトをやっていた。学校で斡旋してくれるバイトだったと思うが、ラグビー部全員が警備員のスタッフに登録して、持ち回りで週末ごとに呼ばれていた。バイトをまとめる係がいて、行きたい時にお願いするシステムだ。1年生の頃は毎週でも行きたかった。

 週末は練習試合が入ることが多いので、そのメンバーに入るとバイトには行けない。僕のポジションは人数が少なかったらしく、練習試合には必ず出られた。そうなるとバイトには行かれない。とは言え、バイトの方が拘束時間が断然長いので、練習試合だけで終われた時の方が楽しかったりする。

 でも、単なる練習の時は絶対にバイトに行きたいのだ。学校のグラウンドは他の部活と持ち回りで、使用時間を割り振っている。だから練習時間は決まっているのだが、コーチのスイッチが入ると全然終わらない。延々と周回コースを走らされたり、グラウンドの端っこで細かい練習をさせられる。

 僕がバイトに行って、寮に戻ると練習に出ていた同級生が暗い顔をしていることがあった。その顔を見て察し、バイトに行ってよかったと思う反面、そういうハードモードを体感しておいた方がネタになるなとも思った。逃げるとクセになるので、それ以降バイトは頼まれた時だけ行くようにした。

 競馬場の警備員といっても、ほとんどは周辺の交通整理だ。人数が足りないと交代がないので、交差点に張り付いて構えていないといけない。工事現場の誘導みたいな複雑なオペレーションはないので、単なるお飾り警備員に過ぎない。講習でも、体を張って暴漢と戦う必要はないと教わっていた。

 あのバイトがシンドいのは、ただ時間が過ぎるのを待っているだけということだ。その場所に自分を置くことだけで金銭が得られるとは言え、その時間を無駄にする感覚が嫌いだった。僕が時間に対してケチなのは、おそらくこの時の経験による。時間を浪費させるなら対価を払え、ということだ。

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路上に遺棄されたフレームは事件性ありか、いや、変身の可能性の方が高い。