君も藤吉郎になれる

 梅雨に入ってしまったけれど、雨だからと言ってジョギングをサボってはいられない。毎日走らないと気持ちが悪いと感じるようなプログラムが僕の中に組み込まれてしまったようだ。今朝も雨が降って鬱陶しいコンディションの中を、ずぶ濡れ覚悟で飛び出した47のオレ。ろくなもんじゃねえ。

 雨が降っていても、走ること自体は苦痛ではない。ただ、濡れて気持ちが悪いことと、通り過ぎて行くクルマが水溜りに突っ込んで泥水をぶっかけようとすることが許せない。クルマに関しては、なるべくドライバーの目を見て制するようにしている。でも、後ろから追い抜かれる時は通用しない。

 濡れて気持ちが悪いことに関しては、学生時代を思い出して諦める。ラグビー部は雨天決行なので、雨でも練習するのが慣わしだ。極端な豪雨や台風でなければ試合も行われるので、雨の中の練習も重要だ。雨天時の定石であるアップアンドアンダーのために、ハイパントとモールプレイを鍛える。

 とはいえ、学生時代も雨の日の練習は憂鬱だった。練習中は吹っ切れて、途中からドロドロになるのも楽しくなって来る。でも、問題は終わった後なのだ。汚れた練習着をまとめて、汚い体を洗ってからじゃないと帰れないので時間がかかる。その上、下級生は先輩の道具も洗わなければいけない。

 下級生の頃、雨が降ると僕の出番だった。僕の役割は「新聞当番」で、雨で濡れたスパイクを乾かすための古新聞を部室に常備しておく係だ。いろんな当番の中でもっとも楽な役割だと言われていた。楽だが、たまにしか出番がないので忘れがちだった。でも、学校で古新聞を調達するのは容易い。

 部室棟の裏に常に山積みになっているのを知ってからは、雨の日にそこから拝借するだけで済んだ。その新聞を先輩のスパイクに詰めて、周りを包んで戻す。そうすると半日も経てば大体乾いている。その先輩のスパイクを乾かす後輩の所作が、戦国時代の豊臣秀吉の処世術みたいで少し嫌だった。

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ジョギングの相棒、乾燥中。新聞紙で乾かす手法は大学ラグビー部直伝。