指先にアシンメトリー

 外食するときは、割り箸を使うことが多い。それは店の都合で、僕が好んで割り箸を使いたいわけではない。できれば割らない箸の方が好みだが、それが用意されていないからといって食べずに店を出るほどのこだわりもない。本当はそれくらい嫌なのだが、空腹に勝てず、仕方なく割り箸を使う。

 僕は割り箸を上手く割れたことがない。必ずナナメに裂ける。長さの異なる2本を扱うのは疲れるので、せっかくの楽しい食事がフルで満喫できない。そのイライラが発汗を催し、激辛でもないのに大量発汗する。怒り心頭に発するってヤツか。誰に対しての怒りかと言えば、自分の不甲斐なさだ。

 50年近く生きてきて、いまだに割り箸もまともに割れない中年男。ずっと苦手意識があるので、かえって力が入って余計に上手く割れないのかもしれない。もしかしたら、一発勝負に弱いのかもしれない。僕は金がかかったジャンケンには必ず負ける。だからやらないが、割り箸は不可避なのだ。

 理想的な箸は、焼肉屋で見かける銀色のアイツだ。ビビンパなどを頼むと出てくる、あの頑強かつシルバーの清潔感と、割り箸よりも長めのサイズが素晴らしい。すべての飲食店に採用してほしい。環境問題をあーだこーだ言ってるヤツらは、まずはそこを訴えてほしい。僕の問題とはまた別だが。

 僕の大好きな店のほとんどは、割り箸を導入している。僕があんなに割るのに苦戦していることを、店側は理解しているのだろうか。してないから放置しているのか、分かっていても声の小さい少数派として黙殺しているのか。僕にしても「あー割り箸って嫌いだなぁ」と声高に叫んだことはない。

 話し合えば分かってくれると思う反面、自分ひとりの意見でその店の備品を見直させるのが申し訳ないとも感じる。そう。いつも、そこで我慢する方を選んでいる。この程度の意見を伝えたところで、たぶん店は動かない。ただ、次に行って割り箸し損なった時に、やり直しはしやすくなるだろう。

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この箸を見てほしい。やはり上手く割れていない。ネギ味噌ラーメンは極上。