唐突にすべて終わる

 僕は周りよりも仕事のペースが早いので、共同作業の中では待たされることが多い。待たされる部分を僕に一任してくれれば早いのだけれど、そうすると僕のギャラが少し上がってしまう。だから、発注元が全部の流れを委譲してくれない。その点が引っかかっているので、待つことが腹立たしい。

 待たせることは他人の時間を奪うことだ。この考えに支配されると、待ち時間は怒りの蓄積タイムでしかない。かなり前の話だが、待ち合わせた人間が「ちょっと待っていてくれ」と言って僕をそいつのクルマの中に置いたまま出て行った。僕をクルマに待たせてそいつが行った先はパチンコ屋だ。

 30分ほどして戻ってきた時には、怒りを通り越して賢者モードになり、その行動がいかにクレイジーなのかをコンコンと説いた。その後もあまり態度は改まらなかったので、そいつとは疎遠になった。思い返すと怒りがぶり返してくるが、その時にそいつがした言い訳が「勝ってたから」だった。

 僕は飲食店で威張るヤツと、待たせることを屁とも思わないヤツが嫌いだ。その両方の属性を持ち合わせていたのが、このクルマに置き去りにするパチンカーだ。そりゃ、疎遠にもなるという話だ。でも、当時はなんとか改心すると思っていた。無駄な努力を重ねた挙げ句、次第に諦めてしまった。

 待ち時間を有効活用するために本を読んで気を散らしたこともあったけれど、待たされる前提の準備が納得できなくて余計に腹が立ってしまう。電車に乗り遅れたとかなら、そういう考え方でも腑に落ちる。でも、僕を待たせるヤツらはナメてるだけなのだ。ナメるなと釘を刺しても響きやしない。

 こういう話をすると「ナメられる方が悪い」という逆の意見を言う輩が現れる。どのツラ下げてと思うが、まさに僕を待たせる連中はそういうことを言う。それを知っているから余計に怒りが増す。仕事待ちの時間にそんなことを考えていたら、その仕事先から「全部OKです」との連絡が入った。

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心静かに仕事をするために、改装した古民家の和室の書斎で働くという妄想。