夢中にさせてくれ

 面白い本は勢いで読み進めてしまう。時間が空くと手に取って、さっきの続きを知りたくて急いでページを捲る。それは幸せな読書体験だが、時にその熱狂に水を差すものがある。誤字脱字の類だ。こんなにスムーズに読み進められたということは、その箇所まで目立った誤字はなかったのだろう。

 単行本や文庫の初版では、もしかしたら校正の目をすり抜けた誤字がそのまま印刷されることはあるだろう。でも、昨日見つけてしまったソレは「7刷」と記されている。これまで7回も素通りしてきたのか。連絡して次の重版では改善してほしいと思う反面、その本を僕は読むことはないだろう。

 そうか、これまでも同じような思いに駆られた読者は何人もいただろう。それでも改善されていないのは、せっかく注意してもこちらには何ら恩恵がないからだ。考えようによっては、せっかく面白い本なので「その誤字さえなければもっと楽しめた」という人を増やしたいと思う気持ちはあるが。

 まあ、その誤字を差し引いても面白い本だったので買って後悔したわけではない。ただ、それがあることで自分が試されているような気になる。誤字がある本を面白がるのは意識が低いような気がするし、本が「このまま見過ごせるのか」と問うてきているようでもある。たぶん見過ごすと思うが。

 備忘録としてメモしておくと、その誤字は340ページの3行目にあり、たぶん「めずらしかった」と記すべきところを「めずしかった」としている。想像だが「珍しかった」と漢字表記したものをひらくように指示されて「ら」を打ち忘れたのではなかろうか。そんな間違いは無数にありそうだ。

 こういう間違いを指摘する割に、このブログをたまに見返すと恥ずかしくなるような誤字は多い。そういう文章は読む気をなくすし、読む人に対して優しくないと感じてしまう。精一杯気をつけようと思うが、それでもミスは無くならないだらう。ここは印刷物と違って即修正できるので気が楽だ。

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工事中の水管橋。頭上の建造物は上からの視線を感じる。常時監視の世界だ。