こころ揺さぶるマニアたち

 先日、長いこと探していた文庫本を書店で見つけたので、即ゲットした。発売して間もない頃は書店に平積みしてあったのだが、翌週になると棚に移動される。さらに数週間経つと、もはや書店では見かけなくなる。初版が売り切れたら重版ということになるが、出版不況の昨今ではそれも珍しい。

 そんなわけで、買えるタイミングでスルーした本なのに時間経過とともに「買っておけばよかった」と思うことはよくある。マンガにも同じようなことが言える。書店のラインナップは回転が速い。一度すれ違うと再会することは困難だ。では、なぜ最初のタイミングで買わなかったのかという話。

 その本のタイトルは「マゾヒストたち・究極の変態18人の肖像」という。この本の作者である松沢呉一さんの作品は他にも数冊読んでいるが、風俗方面に詳しいライターさんである。最初に氏の文章に触れたのはメタル専門誌のコラムだった。そこに記された過激な言葉が思春期の僕に刺さった。

 つまり、僕はこの人の文章には免疫があるわけだ。それでも、最初の段階で引いてしまったのは怖かったからだ。この変態の世界を覗き込んだら「二度と元の生活に戻れないのではないか」という恐怖だ。すでに読み終わっているので元の生活には戻れた。杞憂に終わった。だから人に貸してみた。

 僕がよく本を貸している酒場のバイト女子に「もう普通の本じゃ面白くないでしょ? 刺激が欲しいでしょ?」と無理強いして貸してみた。それは、ある種の実験でもある。内容が面白いことは間違いないのだが、興味もないのに覗くのには酷な気もする。それと同時に普通に楽しめる気もする。

 あとは、その本がインタビュー形式で読みやすいので、強烈な変態プレイの話も「見る」ではなく「聞く」かたちで入ってくるから逃げ場があるように思われる。それに「究極の変態」の行為は、この世にそれ以上がないということだ。キワの話を聞けることは貴重な証言でもあり、勉強にもなる。

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常識に囚われているとブレイクスルーできない。納豆ラーメンも新常識。