集まるな、動物のそれ

 先日、とあるイベントの出展者にブースの店番を頼まれて、2日間ほど販売員的なバイトをした。そこに、初日に買いに来てくれたお客さんが、次の日もブースにやってきた。前の日に交わしたちょっとした会話で、僕が間違った情報を伝えてしまった。その件が引っかかっていたので覚えていた。

 コチラはその件を訂正しようと思って構えていたが、それが用件ではなく、そのお客さんが財布を落としてしまったとのことで「見かけなかったですか?」と、困り顔で聞かれた。別の答えを準備していた僕は面食らって、しどろもどろに「見てません」と答えてしまった。明らかに怪しい態度だ。

 でも、特に僕を「財布ネコババ人間」と決めつけた風もなく、コチラも「注意して見てみます」と答えておいた。その時によぎったのは、僕が電車の中で頻繁に目の前で落とし物をされるということ。あの特殊能力はいまだ健在で、こんな地方のイベントホールでも発揮されていたのかもしれない。

 とりあえず自分のブース周りと、その界隈の影になっている場所を見てみた。見える範囲に異物はない。だが、何故だろう。やけに申し訳ない気持ちが湧いて来る。僕のナゾ能力のせいで落としたのではないかと、変に責任を感じているようだ。そんな責任感も、ワンオペで忙殺されてすぐ消えた。

 そのあと、落とし物のお客さんに再び声をかけた。スタッフの人に聞いても、落とし物はないとのことだそう。そんな落ち込んでいるタイミングで言うことではないが、前の日の間違った情報は訂正しておいた。コチラだけ心残りを解消する嫌らしい行動だが、ひとつ未練を断ち切ることができた。

 そのイベントにはペットも一緒に入場できたので、犬を連れたお客さんも多かった。初日の閉館間際にブースの横で犬が用を足していた。もちろん飼い主が処理して帰ったが、翌日も他の犬がその近くで致していた。どうやら僕の能力は、半径数メートル以内が犬用トイレになるに変わったらしい。

f:id:SUZICOM:20220128151853j:plain

我が家の家庭菜園で採れた怖いとうもろこし。怖いけれどコーンは美味い。