フライングオブジェクト未確認

 僕はUFOを見たことがない。UFOは焼きそばのことではない。小川直也が所属していた格闘技の団体でもない。いわゆる未確認飛行物体のことだ。僕が子供の頃は、そういう特集番組が放送されていた。子供の僕は面白がって見ていたものだが、そこまで熱心ではないので詳細は覚えていない。

 子供なら、不思議なものを見たい願望は多少はあるだろう。それでも頭からUFOの存在を信じていたわけじゃない。だからと言って絶対にいないとも思っていなかった。自分が目撃したら信じようとは思うのだが、もし本当にそのような飛行体を見たとしても手放しで信じられたかは自信がない。

 そのうちUFO特番は、陰謀論的な打ち出し方をしてゆく。目撃者のところにメンインブラック的な男たちが現れるとか、それらの情報を隠蔽する工作が行われるとか、とにかく不穏な動きがあるような雰囲気が強くなってくる。学校でのネタ的な会話で使うような、トンデモな世界になってゆく。

 僕がUFOへの興味というか、単純に見てみたい気持ちが冷めたのは、目撃者が宇宙人に連れ去られる話をし始めたからだ。UFO内部に拉致されて、訳の分からない人体実験をされるという。いわゆるアブダクションというヤツである。そこまで聞くと「ウソこけ」と完全に我に返ってしまった。

 とは言え、おそらく未確認飛行物体というのは存在するのだろう。それは宇宙から来たとかいうファンタジーの話ではなく、隠密活動で領空侵犯した飛行体のことだ。人間が地上から見えるようなものではない。このように現実的に考えると、つくづく自分は面白味のない人間だなと思ってしまう。

 どうせなら、子供の頃にUFO的な何かを見ておけばよかった。誤解や勘違いでも構わないから、そういう不思議を許容する素養を備えておきたかった。今さら遅い。僕の人生に不思議なことなんて何もない。生きているだけでも奇跡で、それは不思議なことかもしれないが、そういう話じゃない。

f:id:SUZICOM:20220123115245j:plain

鳥が連なって、幾何学的な模様を作っていたりする方がよほど不思議である。