誰でもサンタクロース

 クリスマスという、本来の目的からは大幅に逸脱したプレゼント搾取のイベントの季節である。などと、プレゼントに対して否定的と取られそうな表現をしてみたが、実際の僕はプレゼントを選んだりするのは好きだ。実用的ではないが、物欲を刺激する置き物などを見ると、誰かにあげたくなる。

 人に物をあげるというのは、家族レベルで親しい関係でない限り、何かしらの下心を想像してしまう。僕が下心なくプレゼントを渡したとしても、相手に限らず、それを見た第三者も意図を考えることだろう。その最も短絡的で常識的な想像が「恋心」だと思う。好きな人に気持ちを伝える手段だ。

 まあ、確かに嫌いな人には物をあげようとは思わない。でも、その好きは(この歳でこの言葉を記すのは死ぬより恥ずかしいが)ラブではなくライクである。独身者なので全然ラブプレゼントをしても良いとは思うのだが、僕はライクプレゼントを、無意識だと自分を騙して渡していることがある。

 僕も人の目は気になるし、その行動が傍から見たら変な想像をされることは分かっている。だから、そんなプレゼントをする時には、絶対に誤解されないような偽の理由をでっち上げていた。それを伝える時に不自然な感じになるのでウソだとバレていたかもしれないが、対外的な体裁は崩さない。

 もうそんな偽装をしてまでプレゼントするのも潔くないので、最近ではプレゼント好きなオジサンなんだと宣言している。それはそれで気持ち悪いのだが、僕の一面にそのような習性があることは否めない。先日もアンティーク雑貨屋に大量ディスプレイされたマトリョーシカを買う寸前で止めた。

 僕が買おうと思うプレゼントは安いものだ。コスパを考えれば無駄な出費でしかないと思うのだが、それを買って人に渡すという物の移動に価値を見出している。このヘンテコなオブジェはここではなく、あの場所にあってこそ輝くと思えてしまう。物欲という魔法が見せる幻覚に惑わされている。

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建物と建物の間のヌケを文字に見立てられないかと考えて、失敗した構図。