真夜中のムーンウォーク

 歩いて飲みに行くと、歩いて帰ってくることになる。当たり前のことだが、とは言え飲んだ後で歩く距離としては結構遠いので、なるべくバスで帰りたいと思っている。そうできない時は終バスを逃しているのだ。でも、昨日はバスに間に合う時間だったのに歩いた。最近の運動不足を補うためだ。

 酒場エリアから我が家までは、約2キロ程度の道のりだと思う。普段のジョギングで走る距離は5キロ前後なので、酒場まで往復すると4キロとなりジョギングの距離に足りないまでも近いところを補完できる。そんな計算で歩くのだが、アルコールを含んだ体でフラフラ歩くと酔いが強烈に残る。

 調子が悪い時は帰りの道中で何度か立ち止まり、前傾姿勢で呻き声を出すことになる。江戸時代かのような暗い道なので、もし他に人がいたら怖いだろう。でも、人通りも江戸時代のような少なさなので誰も通らない。いつも明るい道を使おうと思うのだが、酔うと強気になって闇を攻めてしまう。

 まあ、歩いて帰るのは健康的なので良いことだとは思う。でも僕の懸念は酔った時の無駄な強気にある。とても民度の低いエリアに住んでいるので、夜道で血気盛んな輩と出食わす可能性もある。それで戦闘モードになったら、思わず受けて立ってしまいそうだ。腕に覚えもないケンカ童貞なのに。

 当たり前のことだが、暴力を振るったらアウトである。それは社会から脱線することを意味する。人間には、大事なものを守るために戦わなければいけない時があるとは思う。それは酔っ払って意識が混濁した状態で、暴力的な誰かと無為に戦うために使うものではない。男気のコスパが悪すぎる。

 そんな暴力シーンに発展することはない。それは人通りがないからだ。人口の少なさに救われている。でも、もしケンカになりそうになったら、あるインド人から授かった言葉を思い出す。それは「ケンカは殺し合い、そのケンカに命を賭ける価値があるか」というもの。確かにそんな価値はない。

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橋の下は幼少期からステゴロの闘技場だが、そういうタイマンの経験はない。