シャクトリムシのジレンマ

 子供の頃のうわさで、シャクトリムシが頭のてっぺんまで登る間に気がつかなければ、その人間は死ぬという話があった。もちろん嘘なのだが、あんな奇抜な動きをする虫を見過ごすようでは隙がありすぎるという注意喚起だったのかもしれない。とは言え、背面を登っていたら気付けないのだが。

 同じようなうわさで、シャックリを100回連続ですると死ぬというのもあった。何でもかんでも「死ぬ」のがオチなので、その辺の短絡的な感じがいかにも子供っぽい。でも、嘘だと分かっていても怖い。シャックリなんて数えないが、100回くらい余裕で出るだろう。少なくとも僕はそうだ。

 むかしからシャックリが止まらない。何かのきっかけで出始めたら最後、1週間以上止まらないこともある。終始出続けているわけではないのだが、一度寝て止まったかと思うと復活するというのが数日続く。かつては止め方をいろんな人に聞いて回ったものだが、何をしても効果がないと知った。

 木曜日からシャックリが出続けている。横隔膜のけいれんというメカニズムは知っているけれど、それを意識しすぎてみぞおちの辺りに力が入ってしまう。力んでいるから余計に大きなシャックリが出る。逆効果だが、とは言え意識しないで不意打ちされると、想定外の変なシャックリ発作になる。

 最近は電車で出かけることも減ったが、以前は電車内でシャックリが止まらなくて恥ずかしい思いをしたことが何度もある。座席に座っている時だと、長椅子なので衝撃波が伝わってしまう。もうシャックリのことしか考えられなくなり、ただ止まることを念じるのみだ。もちろん願いは叶わない。

 シャックリが出るのは飲酒時が多い。アルコールとの因果関係は分からないが、確かに酔っ払いのコントなどでヒックヒック言いながら千鳥足というのは定番の酔っ払い演技だ。でも、僕以外でシャックリに困っている人を酒場で見たことがない。もしかして、みんな自力で止められるのだろうか。

f:id:SUZICOM:20211031173201j:plain

匿名性の高い街の風景を見ると、白昼夢という言葉を思い出す。酔ってるのか。