伝わらない意図、絡まる糸

 先ほど、通りすがりの人が「俺が何でこの質問したかわかる?」と同行者に問うているのが聞こえてきた。イラッとさせる言葉だが、言い方は穏やかだったので詰問調ではなかった。でも、その言葉だけを見ると問い詰めている。相手に対して話し手の意図が伝わっていないことを軽く責めている。

 僕が極端に言葉に対して潔癖なのかもしれないが、そういう姿勢は特大ブーメランとなって自分に返ってくるので注意した方がいい。それでも、この通りすがりの詰問には心配になってしまった。明らかな上下関係がある場合なら、意外と聞き流せる。でも、彼らを見る限り友達同士のようだった。

 ちなみに僕は、最初に入った会社で上司から似たような言葉を連日浴びせられていた。相手の意図を察して先に動くのが営業マンだから、気がつけないと使えないということだ。確かに察しは悪かったかもしれないが、それは基本を覚えてからの応用編だと思うので、まず基本を教えて欲しかった。

 そんな青臭いサラリーマン初期の思い出とともに、朝すれ違った二人組の会話が気になったままジョギングしていた。彼らがその後、どんな会話を転がしたのか想像していた。「俺が何でこの質問したかわかる?」の続きだ。20世紀末の僕に置き換えて考えると、その言葉を聞いた瞬間に冷める。

 自分は普通の会話だと思って返しているので、急にモードを切り替えられて気分が悪いのだ。でも、こちらの気分が悪くなったことは「察するに足らん」のだ。会話の主導権はすべて、上司にあるという前提で話は進んでいく。その初期設定がそもそも気に食わないので理解が深まらないのだった。

 そこに、もうひとつの視点が加わる。リアル現在の僕の目だ。青臭い新入社員の僕を、これまた冷めた目で見ている。ひとことで言えば「雑念が多い」のである。シンプルに、早く仕事を覚えろって思ってしまう。そこに至り、さっき詰問言葉を投げかけた方に想いを馳せる。心中、お察しします。

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今までの人生はほぼ迷路の中だったが、迷路から出たら人生終了な気もする。