夜にこんにちわ

 緊急事態宣言明けの金曜日。久しぶりに夜の街が帰ってきた。行きつけの酒場が再開するというので顔を出してきた。前日にメールでオープンの確認をした手前、行かないわけにはいかない。そんな言い訳を用意して、雨風吹き荒れる街に飛び出してズブ濡れだ。濡れた不快感は生きている証しだ。

 もう感染症対策が当たり前になっていて、手指消毒とか手洗いとかマスクとか、そういうことは身についてしまっている。清潔なのは良いことだが、自前の価値観ではなく、お仕着せでやらされていたことが身につくというのは複雑ではある。こういう細かい部分を見ても、僕らの生活は変わった。

 ただ、そういうマナーをストレスなく自然にやるためには、鈍感になった方が良いような気がする。ナイーブになりすぎて生活のいちいちを納得できないでいると、生きにくさが増すだけだ。もう呼吸をするように手指消毒、靴を履くようにマスクを装着する。流れ作業に没入してしまえばラクだ。

 酒場では相変わらず、知った顔たちが好き勝手に話している。今までと何ら変わらない日常のように見える。でも、以前なら大きな声で話すところを、ボリュームを抑えて話してしまう。自動的にブレーキがかかる仕様になっている。それで良いと思う。周りへの配慮は優しさだ。優しい方が良い。

 とにかく生ビールが美味い。これのために生きてきた。これからも、これがあれば生きていける。これを飲むために健康を維持しているわけだ。僕の尿酸値が高いのもこれのせいだが、これをやめるわけにはいかないので、やめなくて良いように数値改善に取り組んでいる。矛盾を抱えているのだ。

 何杯飲んだか分からないが、たっぷり飲んだので歩いて帰った。帰り道、コンビニに寄ってコッペパンと牛乳を購入した。久しぶりの菓子パンは、以前よりも甘さ控え目に感じられた。時代の健康志向に寄せているのだろう。すべては時代に合わせている。そろそろ時代が僕に合わせてくれと思う。

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運転席の裏は特等席。鉄分低めの僕もそろそろ電車で遠出がしたいところだ。