侵食する黒色、耐える肌色

 日焼けは肌の敵みたいな話はよく聞く。肌の手入れに無関心を決め込んでいる僕の耳にも入ってくる。男性は一般的にスキンケアには無関心なものだという思い込みがあり、勝手にその男性像の中に自分をハメ込もうとしているのかもしれない。そのような旧態依然の美意識に囚われて生きてきた。

 中学生前後で顔にニキビができはじめた。高校生まで絶え間無くニキビに覆われていた顔面は、見事な月面上のクレーター肌に仕上がった。その時期は念入りに洗顔する程度の気は使っていた。でも、皮膚科を受診して薬を処方してもらうことはなかった。いま思えば行っておけば良かったと思う。

 もし僕に子供がいたなら、歯と肌のケアは徹底させていただろう。それらは清潔感につながるので、他人からの印象を悪くしないためには大事なのだ。そういう外見からの印象で説得力も増すし、自然な社交性も身につく。不要な劣等感で引っ込み思案になることもないだろう。良いこと尽くめだ。

 そのようなケアを怠った子供が大人になり、クレーター肌のまま中年域を走り切ろうとしている。そこで生まれた新たな懸念が冒頭の日焼け問題である。日に焼けるとシミができる。そういう肌の仕組みを見て見ぬ振りして生きてきた。仕組みは無視できても現実は目に入ってくる。それがシミだ。 

 むかしのコントでおじいちゃん役をやる芸人が、メイクで書いていたような箇所にシミができる。こめかみの辺りに、老人感バツグンのシミ群が存在感を主張している。これを人間の自然な成り行きとして認めるのはまだ早い気がする。なけなしの「男の色気」の炎が消えかけている。対策せねば。

 外見を良くしようという色気は減ってきたのだが、ネガティブな印象にならないような努力はするべきだと思う。ふと鏡を見てみれば、頭髪も薄くなった中年男がじっとりとした目つきでこちらを見返してくる。ヘアケアも怠ってきた。全ての因果応報を回収する時期にきて、必死に足掻いている。

f:id:SUZICOM:20210929095756j:plain

岩盤に掘った穴には即身仏がいそうで怖い。怖いもの多数。悟りには程遠い。