社会の仕組みはソフトタッチ

 今年の春に亡くなった祖母の遺産を母親が相続したのだが、その相続に関して家族そろって持て余していた。祖母の遺産は郵便貯金だけで、それを相続する権利者は母親ひとりだった。そのことを証明する書類を揃えるためにひと苦労あったのだが、親戚と役所の手を借りて事なきを得たのである。

 その段階で相続税について調べたら、母親の受け取った額では申告対象外とのことであった。でも、それはネットで調べただけなので、本当に額面通りに受け取ってガン無視で良いのか自信が持てずにいた。その懸念を抱えていた母親が「市役所に行ってきた」と聞き、再び相続問題が動き出した。

 もちろん市役所では相続問題は扱っていない。母親が役所でもらってきたのは近隣の担当税務署の連絡先である。そこに連絡すると、音声ガイダンスに従って何段階か踏んだ後で担当者の女性と繋がった。最初は母親に話を任せたのだが、公的な手続きの話が苦手そうだったので途中から代わった。

 順を追って端的に話したところ、ネットで調べた通り申告対象外であることは間違いなかった。そこで、もうひとつの懸念であった確定申告について聞いてみた。相続した金額を確定申告する必要はあるのかということだ。それについても、相続税の対象でしかないので申告は必要ないとのことだ。

 ちょっと複雑に考え過ぎてしまっていた。最初の郵便貯金の手続きが難解を極めたので、それと同様の面倒がこの先も待ち受けていると思って構え過ぎていたのだった。もっと早く税務署に連絡して聞いておけば良かった。このことを考えて憂鬱になった時間は無駄でしかないが、肩の荷は下りた。

 ついさっきの、その数分の電話が家族の気持ちを軽くした。重石のような気がかりがスッと流れて行った。でも、よく考えたら初めから何ら問題はなかったのである。申告不要なのだから何もする必要はないわけで、そのことを税務署の人間の口から直接聞けただけである。人との会話って大事だ。

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相続税の懸念が消えた瞬間「軽自動車でも買う?」と軽口をきいてしまった。