赤いキャップの方にしてくれ

 小さい頃はマヨネーズが嫌いだった。味に慣れていなかったので、最初のうちは気持ち悪く感じていたのだろう。我が家の食卓にあまり乗らなかったというのもある。でも、いつの間にかマヨネーズなしでは済まないカラダになっていた。特に唐揚げには絶対にマヨネーズをちょっとだけ付けたい。

 最初にマヨネーズを受け入れたのはトマトとの相性だろう。もともとトマトは嫌いだったのだが、トマトジュースを飲めるようになってなし崩しにトマト本体も美味しく感じられた。はじめは軽く塩して丸ごと食べるのが好きだったが、これをマヨネーズに変えてからさらにトマトが好きになった。

 その後、定食屋でキャベツの横に添えてあるマヨネーズが唐揚げについていたのを機に、その相性の良さに唐揚げの地位が向上した。ずっと好きだったけれど、マヨネーズを合わせて以降はレジェンド級の存在感を主張している。脂っこい調味料に感じるけれど、マヨネーズは酸味が爽やかなのだ。

 定食に添えてあるマヨネーズといえば、僕にとって忘れられないマヨ相性メモリーがある。学生時代に大飯食らいの僕らが通っていた大学近くの定食屋だ。店名に北京と付いていたから町中華と言って良いのだろう。その町中華の店で、僕らがいつも頼んでいたのは焼肉定食というメニューだった。

 焼肉が乗った皿にはキャベツの千切りが盛ってあり、その横には当然マヨがひと絞り添えてある。そして焼肉のタレを効かせて焼いた何某かの肉は甘めだ。この甘めの肉とマヨを絡ませて食べると、店の人間が想定していないと思われる味にメタモルフォーゼする。マヨすることで完成とも言える。

 学生時代に過剰に好きだったものは誤解である可能性もあるので、僕は当時の味覚はあまり信じていない。だから後日確認するべきだと思う。でも、その店名に北京と付く定食屋はもうこの世にない。卒業して間も無く閉店してしまった。もう二度と食べられないと思うと、それはもう伝説である。

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調味料には絶対的な相性のものがある。平塚タンメンにおける酢もそうだ。