酔いどれ、闇夜を往く

 昨日は久しぶりにハシゴ酒をしてしまった。この時期に遅くまで飲んでいるのはケシカランことだとは思いつつ、仕事が片付いた日くらいは飲みたい誘惑に負ける。次の店に行くときにマスクを着けるので、そこで現実に戻ることができる。最終バスを逃してしまったが、こんな日は歩いて帰ろう。

 大量に飲んでしまうと体力を使うのだろう、必ずお腹が空く。いつもはやり過ごせるのだが、歩いて帰るとなると腹に入れておきたい。今までいた店で食べればいいものを、なぜか店を出てから空腹に気付く。でも、本当は寄り道したいだけなのかも知れない。この夜をまだ終わらせたくないから。

 帰り道にはラーメン屋などの飲食店がないので、最後の店からすこし遠回りして牛丼屋のチェーン店に入った。仮に御三家があるとしたら、たぶん末席に位置する牛丼屋だ。そして、僕はここで牛丼を頼むことはまずない。必ず牛焼肉定食を頼む。最近は飽きたので、やめようと思っていたのだが。

 いつものようにサラダにはフレンチドレッシングをかけて、大根おろしとポン酢のタレで薄い肉をパクパク食べる。食べたんだろうけれど、流れ作業のように早食いしてしまうので味の感想も食べた記憶もない。ただ、口の臭いが肉についた油の臭気を放っているので、事実なんだと思い知るのだ。

 食べた後は、家までのロングウォーキング(推定約2キロ)である。その道すがら、大学の先輩が言っていた言葉を思い出していた。部活の朝練の前に、駅近くの牛丼屋で食べる牛焼肉定食の旨さを話していたら、先輩から「あんなパサパサのサラダと薄い肉をありがたがるなよ」と突っ込まれた。

 あの時も牛焼肉定食の呪いは一旦解けたのだ。でも、忘れた頃につい頼んでしまう。あれを美味いと感じる回路が確立されてしまっているのだ。フレンチドレッシングの酸味、おろしポン酢の酸味、うす肉の甘みの三重奏(酸味がカブっているが)が僕の好みにピッタリなのだろう。また食べたい。

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安いとはいえ、学生時代は牛丼の倍近い値段だったので贅沢品だった。