あの夏の海は曇り空

 学生時代はあまりパッとしない記憶しかないのだが、そんな僕でも夏になると海に行って遊ぼうと試みたことはある。部活が最優先だったので、限られた休みの日に部活の同期と海に行ったのだ。誰かがクルマを出して、向かった先は江ノ島。渋滞回避のため早朝に出たのだが、着いた頃には曇天。

 ちゃんと天気予報も見てないので、着いた場所で「晴れろ」と祈るばかり。昼時まで待ったのだが、終いには横なぐりの雨が降ってくる始末。砂浜を見回しても、出歩いてるのは僕らだけ。何かを期待して海に行ったのに、そこには人すらいないという。天気にも見放されたひと夏の出来事である。

 高校生までは夏と言ったらプールだった。海なし県生まれプール育ちというヤツだ。もちろん泳ぐのが目的ではないので、泳ぎが下手な僕でも楽しめる。スケベな下心を隠しつつ、仲間とワイワイ楽しめたものだ。あの頃の埼玉東部エリアの人間の定番は、東京マリンかしらこばと水上公園だった。

 僕の印象としては、東京マリンの方が楽しかったような気がする。なんとなく同県内にあるプールにはローカルな匂いがするので、越谷にあるしらこばとよりは足立区のマリンの方が特別感があったかもしれない。でも、本当に楽しかったプールはサマーランドだ。子供心に帰りたくないと思った。

 とにかく、僕には夏の海に特別な思い入れがないのだ。夏と海が紐付けられていない。それよりもビアガーデンとか、川のキャンプのようなイメージの方が思い浮かぶ。河原でキャンプなんて数回しか参加したことないし、それも子供の頃のことだが、大人が何でも準備してくれる気楽さがあった。

 40歳を過ぎて、酒場の仲間に誘われて何度か九十九里浜に海水浴に行った。浜に着くと、彼らの行きつけの海の家にチェックインし、終日そこで過ごしつつ海で軽く揉まれる。気兼ねなく遊べる海遊びを教えてもらった。クルマの運転がなかったので、海を眺めつつ生ビールを飲めるのも最高だ。