サイテー野郎によろしく

 僕には性格のよろしくない部分がある。自分で決めたことは、他の人間の手柄にしたくないと思ってしまう頑ななところがある。そういう時に嫌なことを言ってしまう。それが後になって、何であんなこと言ったんだろうと後悔することになる。でも、それは止められない。それは僕の性質だから。

 先日、アウトレットで買い物をした時の些細な出来事。パッと見て気に入ったシャツを試着した時に、店員さんに「これ、良いですよね」と言われたのだが、そもそも僕が試着をお願いした時点でそれが良いことは確定している。それを店員さんの手柄にしたくなくて、嫌なことを言ってしまった。

 反射的に僕の口からは「変なガラですよね」と、ネガティブ要素を含んだ言葉が飛び出していた。シャツの一部に派手なガラがあり、それが気に入って手に取ったのだ。それを店員さんが「良い」と評価していることに待ったをかける発言だったと思う。いや、僕にはその意図が明確にあったのだ。

 そうやって商品価値を言葉で下げることで、あなたの見立ては間違っていると思わせる意図があったように思う。その上で、さらに「じゃあ、これください」と、結局は買うのだ。この商品を買うのは自分の意思だと相手に思わせたい圧力を感じさせる。まったく、幾つになっても小さい男なのだ。

 この伝わりにくい話を知り合いに聞かせてみたところ、その店員さんのことを気に入らなかったんじゃないかと言われた。服を買いに行くと、店員さんに張り付かれることが多い。多くの人が、その接客シフトに関して拒否反応を覚えると聞く。僕もそうだから、お店では戦闘体制を敷いてしまう。

 構えた心で店員さんと対峙しているので、要らぬ攻撃性を発揮してしまう。でも、気に入ったシャツを見つけた時点で僕はハッピーだったはずだ。それを店員さんとシェアした方が幸せ倍増なはずなのに、僕はその幸せを独り占めしてしまったわけだ。そう考えると、無駄な強がりだったなと思う。