空を飛べると思ったか

 中学校の同級生で、小学生の頃にベランダから飛んだ男がいた。自室である2階のベランダから「パワッチ」と叫んで飛んだという。親から買ってもらったパーマンセットを着込んで飛んだらしい。パーマンセットを着たら飛べると思うのは無邪気すぎるが、当人に確認したら事実だということだ。

 中学校の同級生で、小学生の頃に友達の指をハサミで切り落とした女子がいた。買ったばかりのハサミを無邪気に「チョッキンチョッキンチョッキンな」と歌いながらチョキチョキして浮かれていたら、勢いで近くにいた男子の指を切ってしまったという。陽気な鼻歌のせいで余計に凄惨に感じる。

 自分が小学生の頃に、周りにこんな面白い(と言っては不謹慎な部分も多少あるが)人間がいただろうか。変な先生は多かったが、生徒のことはあまり印象に残っていない気がする。もちろん自分と仲の良かった連中のことは覚えているが、彼らが特異なエピソードを持っていたかは思い出せない。

 近しい人の話だと実際の背景を知っている分、そのエピソードにまとわりつく生臭さが面白さを消してしまうのだろう。ほとんど事情を知らず、事件の概要だけ聞くから面白く感じられるのだ。パーマンになって2階から飛んだ男は骨折したらしいが、後から聞くとバカバカしい話としか思わない。

 ちなみに、思い出したついでなので変な先生のエピソードをひとつ記しておく。ある日、転校生を紹介する時に先生が言った言葉で「紹介する前にお前ら、絶対に笑うなよ」と真顔で念押しされたことがあった。どういうことかと思って転校生の顔を見た瞬間、クラス中に笑いの渦が巻き起こった。

 彼は完全な日本人なのだが、色が黒いのと天然パーマにより、当時はやっていたエマニエル坊やのような風貌だったのだ。見た目をイジるのは下衆の極みだと思うが、あれだけ念押しされると逆に「笑っていいよ」と言われたような気になる。大きな爆笑を収集できず、結局先生も苦笑いしていた。

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インドの街角の子供。目鼻立ちのハッキリした顔の子供は万国共通で可愛い。