友達になりました

 数年前に読んだ燃え殻という作家の「ボクたちはみんな大人になれなかった」という小説は〈最愛のブスに“友達リクエストが送信されました”〉という第1章からはじまる素敵な物語だ。作者の私小説のようなリアリティがあるが、実際のところは知らない。ただ、同世代の話なので共感できる。

 フェイスブックを使うようになって10年近く経つ。最初はとりあえずアカウントを取っただけで、使い道もよくわからず放置していた。そのうち友達申請が増えて、周りの人の投稿を見ているうちに自分も投稿するようになった。くだらない日常だが、写真付きでアップすると記事っぽく見える。

 エスエヌエスの使い方としては非常に野暮ったいと思う。あまり拡散してほしいような内容でもないが、当然ながら一般人の投稿なので限られた範囲にしか届かない。全然それでいいが、誰も見ていなければ投稿する必要がない。〈いいね〉を欲しがるわけではないが、ひとつの指標にはしている。

 疎遠になっている遠くの友達に届けばいいなとは思っている。そいつらからの反応があれば嬉しい。そういう相手からは反応が帰ってこないものだが、それでも懲りずにチョコチョコと投稿してみる。濃い味のラーメンを食べたとか、ビールと一緒に美味い料理を食べ過ぎたとかの報告ばかりだが。

 冒頭に引用した燃え殻氏の小説のような女性がらみの浮ついたエピソードはない。いや、小説のそのエピソード自体は浮ついていないのだが、僕自身には浮ついた出会いのキッカケのような出来事が起こってほしいと思っている。古い知り合いから申請が来て、トントン拍子にお近づきになるとか。

 先日、知らない名前の女性から友達申請が来た。よくよく確認したら中学の同級生のようだ。共通の友達でだいたいの想像はつく。承認してしばらくすると、律儀にダイレクトメッセージが送られて来た。その人は幼なじみだった。これは浮ついたエピソードではないが、ちょっとだけ嬉しかった。

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僕が子供の頃の近所というと、こんな錆びたトタンの工場ばかりだった。