残り香が彼のメッセージ

 以前、俳優の沢村一樹さんが加齢臭のことを「ダンディ・フレーバー」と言い換えていた。悪くない表現だと思ったが、加齢臭を発する人間が必ずしもダンディとは限らないとも思った。ダンディを定義する要素は、ただ大人の男であれば良いと言うわけではないような気がする。個人の見解です。

 僕のイメージではスタイリッシュな大人の男でなければいけない。そしてタフな男でなければいけない。僕のように日常の些事に一喜一憂しているような豆腐メンタル男は論外だ。念のため多様性への配慮として注釈をつけておくと、ここではダンディに関して男性性に限定して記させていただく。

 冒頭の加齢臭の話ではないが、僕がダンディという言葉を聞いて思い出す人間はただひとり。前の職場で一緒に働いていた営業の先輩だ。その人はスタイルを持っていた。一度会ったら絶対に忘れられない強烈な個性をスタイルとして持っていた。人間性ではなく、それは外見と香水によるものだ。

 外見に関しては詳細は省くが、とても個性的な髪型をしている。それだけで十分に印象的なのだが、さらに強く香るのが香水だ。ジバンシイのウルトラマリンという銘柄だそうだが、そのとき初めて香水の銘柄を覚えてしまった。昨年の流行歌ではないが、街であの香りが漂ったら思い出すだろう。

 営業マンは「顔を覚えられてナンボ」みたいなことをよく聞く。そのためにセルフプロデュースして、顧客に自分を売り込むのだ。そうやって独自のスタイルを確立させていく。ウルトラマリンの先輩は、そういう営業マンの象徴的な存在だ。僕が恥ずかしくてできないことを全部やっているのだ。

 思い返すとあの人はダンディだったなぁと思う。自分で自分をダンディとしてセルフプロデュースしていたフシがある。メールアドレスの一部にもダンディというワードを用いていた。隙がない。スタイリッシュな人間はトータルコーディネイトされている。今でもどこかでダンディでいてほしい。

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あのダンディは東京の東側の生まれで、下町が似合う酒好きの男だった。