しばらく休みます

 日記というものは書き続けなければいけない。そう思うのだが、個人的なことがあってしばらくは休もうと思う。すこし前に、入院していた祖母が亡くなったと父親から電話があった。その報せが想像以上にショックだったので、文章を書く練習をする気分になれそうもないというのが理由である。

 祖母と一緒に暮らすようになって10年近く経つだろうか。最初のうちは歩いたり、特に不自由なく生活できていたのだが、ここ数年は母が完全につきっきりで介護していた状態であった。それでも病気がちではなく、ひっそりと確かに生きていた。それが先週末、ちょっと体調が悪くて入院した。

 今日の夕方になって病院から慌ただしく連絡が来るようになった。「最悪の状況を覚悟しておいてください」と電話で念押しされたらしい。憔悴している母親を見て、僕は「誰のせいでもない」という誰も救わない言葉をかけるのが精一杯だった。そのあと病院に向かい、しばらくして報せが来た。

 妹にその報せを電話で伝えると、不意に嗚咽が漏れそうになり、必死に耐えた。「亡くなった」という言葉を口にしようとしたら、急にその現実が目の前に立ち塞がってきた。何か自分がものすごい悪いことをしているような気になった。その電話を切ったあと、こみ上げるいろんな感情で泣いた。

 でも、僕が思ったことはたったひとつ。優しくできなかったなぁということ。人生の最晩年に現れて、母親に苦労ばかりかける存在として祖母を見ていた。それが、すこしずつ弱っていく最近の様子を見ていると、段々と優しくなれそうな気がしていた。そんな矢先に2度と優しくできなくなった。

 こういうことを、こんなリアルタイムに記すのは不謹慎かもしれない。でも、日記として残しておきたい感情でもあるので記す。生きている人には優しくしようって。別に故人が何かを残したとか、バトンを受け取ったという感動的なことじゃなくて、やっぱり永遠の別れってのは悲しいんだよな。