うつろなカーディーラー

 両親のクルマが車検だったので、代わりにディーラーまで行ってきた。普通のことなのかもしれないが、ディーラーで車検を通すなんて僕には初めてのことだ。いつも中古車屋さんに頼んで「格安で」と念を押してやってもらっている。ディーラーは高いという刷り込みは、そこで作られたものだ。

 初手からディーラーに対して斜に構えているので、つい態度に出てしまいそうになる。でも、ここは丁寧に対応しよう。僕もいい大人だから。事前予約で店に11時に来てくれと言われたので、ちょうどに着くと「15分待ってください」と言われ、その15分で地獄を一周していい大人に戻った。

 整備の担当者がやって来て、今まで何度も聞いたことを説明する。それは分かるから良いよとは言えない。いつもより検査項目が多かったりサービス料金が高かったりしたら、両親に代わって抗議しなければいけない。そんな気持ちでいたが、20以上年下と思われる担当者を見ていると丸くなる。

 そもそも、ちゃんとした会社がそんな法外な料金を取るわけがない。ディーラーが高いというのは、単に一律のサービス料金でやっているだけのことだ。そう思って、もう構えるのはやめた。その瞬間を狙いすましたかのようにオプションのサービスを押して来たのには苦笑した。もちろん不要だ。

 車検が終わるまで数日かかるので代車が出た。僕は、代車に乗れることを車検の楽しみのひとつだと思っている。まったく自分の趣味でもなければ興味もないクルマに乗れることは滅多にない。今回はディーラーの代車なので、そのメーカーの新車が用意された。鮮やかなブルーの派手なクルマだ。

 その代車は新車だが、ナビなどの装備品が一切付いていない無愛想なインテリアだった。いや、ナビは別に良いけれど、ラジオもないというのは寂しい。自分の趣味じゃないクルマでも、何かしら音が鳴っていれば耐えられるというものだ。無音で「エンジンの音色を聴いてください」ってことか?

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自動ブレーキが急に作動する点を指摘すると、マンホールに反応するそうだ。