瀬戸際の攻防に弱い男

 僕にはむかしから、土壇場でひと押しされると転んでしまう気の弱いところがある。何かを成し遂げる時は、情熱が大きい方がそれを行うべきだと思ってしまう。僕にはあまり情熱がないので、熱い誰かにいつも負けてしまうのだ。能力の問題なんて関係なく、最後の決め手はなんでも熱量なのだ。

 この月末で絶対に終わらせたい仕事があった。来月になると別の仕事でバタつくので、早めに手を打っていた。ところが、最終局面になって進んでいた内容の一部を差し替えることになった。その対応が週末になるので、結局フィニッシュは週明けとなる予定だ。しかも、さらにズレ込む予感あり。

 僕が最後の方で甘い言葉を吐いてしまったのがすべての元凶なのだ。僕の締め切りとリアルの締め切りに差があり、そのリアルの締め切りを言わなくてもいいのに口を滑らせてしまったのだ。それを教えて困るのは僕だけなのだが、なんとなく嘘をついているような状況に我慢ができなくなるのだ。

 そんな自爆により、この週末はポカンと予定が空いてしまった。仕事が詰まっていれば休日の時間もやり過ごせる。でも、予定がなくなると飲みたくなってしまう。厳しく節制しているわけではないとはいえ、毎日体重を計っていると増減が気になって知らないうちに自分でセーブしてしまうのだ。

 そもそも昼食は、こんな自粛世界でなければ普通に毎日ラーメンになるのだ。仕事していて街に出たら、そこにはラーメン屋しかないのだ。僕の体を気遣ってくれる母親のような食堂は、この世で唯一、我が家しかないのだ。だから、こんな世界のおかげで偶然いまだけ節制できているに過ぎない。

 保健指導でもラーメン禁止とは言われなかった。そりゃ当然、向こうも健康に難アリな人間に「なんでも食べて良いよ」とは言わないだろう。そろそろ限界だなぁと思ってはいるのだが、仕事ではあらゆる瀬戸際に敗れ去った僕なので、ここだけは死守したいという気持ちが芽生えてしまっている。

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今は食欲の蓋に鍵をかけているが、この程度の南京錠なので軽く壊せる。