どのツラ下げて恋愛相談

 僕は、数年前あたりから密かに他人の相談に乗るのが好きなことに気がついている。中年になるとこの傾向があって、若い頃はそういう「聞いてやるぞ」的な態度のおじさんを半笑いで見ていた。だから今、その半笑いは僕に向かっているのかもしれない。それには勘付かない程度の鈍感ではある。

 何で相談に乗るのが好きなのかといえば、自分にはない悩みを聞くことで自分のキャパが少し拡張される錯覚を覚えるからだ。バーチャルで体験したような気になり、それは時間を経て「ほぼ自分の体験」として身についている。身に付いているというより、その程度の間接的経験で満足している。

 残りの人生や自分の時間的余裕、または体力を鑑みると、そういう経験をするには手間がかかるなと思ってしまう。しかも、相談されたり悩んでいたりするということは、その当人はそれに失敗しているわけだ。失敗こそ得るモノの多い経験なので、それを疑似体験できるというのは有難いことだ。

 50近い男がこんなことを言うのは恥ずかしいが、僕は恋愛経験に乏しい。人並みに付き合ったり、告白してフラれたりという通り一遍の経験は持っているが、人に恋愛相談されて「その場合は」などと振り返るようなパターンを持っていない。でも、だからこそ恋愛相談で機能拡張したいと思う。

 男性はそういうことをあまり他人に相談しない。本当はした方が良いと思うような人間に限って、絶対に相談しない。そういうタイプは、ハナから玉砕覚悟なのだ。若くて綺麗なだけで相手を選んで、大したリサーチもせず告白して普通に断られる。それでも生意気に傷ついたりする。意味不明だ。

 僕も玉砕告白の経験はあるので、こういうタイプが繰り返す性質を持っていることは知っている。だから、言えることは豊富にあるのだが、先に述べたように絶対に相談されない。自分の恋に酔っているので、他人に干渉されたくないのだ。最後、フラれてヤケ酒までを含めて完結する美学なのだ。

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数年来ずっと「先輩に聞いて欲しいことがあって」という言葉を待っている。