もうひとつの脳みそ

 自分には分からないことは、賢い他人に教えてもらえば良い。友だちというのは、そういう便利な存在だ。そのために普段から周囲の人には優しくしておく。いざという時に頼れるからだ。でも、それは自分の都合だけで利用しようと考えてのことじゃなく、ちょっとしたヒントをもらいたいのだ。

 そのヒントは刺激と言い換えてもいい。自分の中にない発想を他人の脳から拝借するのだ。思考の伸ばし方は人それぞれで、自在に伸ばせる人もいれば、ほとんどブレないガチガチの頭デッカチの人もいるだろう。どんな人でも構わない。とにかく、誰であろうと絶対に僕とは違う考え方のはずだ。

 その違いが僕の感情を揺らし、ずっと止まっていた物事を動かしたりするときがある。どんな人からも刺激を与えてもらえる。とくにこちらが頼まなくても、その人が同じ場所にいるだけで化学反応が起こる。微細な変化だが、そうやって心が動くことで血の巡りが良くなる。だから酒場は大事だ。

 酒場にはほとんど同じ人が集まる。毎回同じ顔ぶれでも、そこで起こることは前の日のコピペではない。代わり映えのしない日常に思えるけれど、そこには小さな変化があるのだ。とは言え、僕は飽きっぽいので、刺激が少ないと感じたら別の酒場に行ってしまう。酒場はいくつあっても困らない。

 昨日は痛風発作に怯えながら、それでも我慢できずに酒場に顔を出した。営業時間が長くなったので、ハシゴできるようになった。最初の店では痛風対策のために酒量を控えたが、次の店ではブレーキが効かなくなった。その店でよく会う常連に、いま抱えている仕事の小さな悩みを相談してみた。

 普段はあまり話さない人なのだが、僕とは業種が近いので仕事の話はよくする。その人の方が歳は下だがキャリアは断然長いので、聞くべきことはたくさんある。ただ、僕の理解が追いついてないので、そういう話をするのは年イチくらいの頻度だ。昨日の話では、結局僕の問題は解決しなかった。

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頭がこんがらがった時にふと電車で出かけるが、何もリフレッシュできない。