バンジージャンプ記念日

 むかしのTV番組で、アフリカの部族の「成人の儀式」が紹介されていたのを覚えている。おそらくバンジージャンプの起源だと思うのでネットで調べたら、そのようなことが記されていた。バンジーとはゴム紐のことだそうで、アフリカ(正確にはバヌアツ共和国)の本場モノとは大きく異なる。

 本場で用いられているのはヤムイモのツルだと記されていた。ゴム紐ならば伸縮性があって衝撃を吸収してくれそうだ。でも植物のツルに伸縮性は期待できない。場合によってはブチ切れることもあるようなので、まさに命がけのイニシエーションなのだ。その儀式は「ナゴール」と呼ばれている。

 古代、ただ生き残ることですら苛烈だった時代には、通過儀礼として人間の選別が行われていたような話をよく聞く。己の身を守らなければいけないし、一族の食料調達のためにも身体能力の高さが切実になってくる。そういう世界では、弱いものは間引かれる運命にある。弱肉強食の世界なのだ。

 そんな古代の苛烈さが、そのままナゴールには名残りとして残っているような気がした。TVで映し出された成人の儀式では、バンジージャンプのような高所からではなく、木の上から飛び降りるようなイメージだったと思う。だから死のリスクは低いけれど、それでも確実に怪我しそうな高さだ。

 番組ではその後の様子まではフォローしてない。僕が覚えていないだけかもしれないが、とにかく若者が飛び降りて、地面に体をしたたか打ち付けたところで下にいる者が足の戒めを解く。見る限りでは、みんな吊られていた方の足を傷める。後年まで後遺症が残りそうな箇所の負傷なので心配だ。

 そんな、おそらく怪我をしたであろう若者たちのその後が見てみたい。今でも彼の地では同じ儀式が続いているのだろうか。当時は「怖いことするな」と思いつつ、心の中では冗談のように感じて見ていたのだ。その後ろめたさがあるからだろうか、たまに無性にバンジージャンプに挑みたくなる。

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バンジージャンプで怖いのは、紐が切れることと、紐が首に絡まることだ。