燃え尽きる前提の魂

 スポーツを観ていて感動してしまうのは、その競技に打ち込んでいる選手の最高の瞬間に立ち会えた時だ。団体競技だと、学生スポーツからプロや実業団へと振り分けられる際に、チームメイトと完全に道が別れてしまう。つまり、そのチームでの最高到達点に挑む機会は大学だと4年間しかない。

 今年の大学ラグビーは、先ほど天理大学の優勝で幕を閉じた。ここのところ名門の早稲田・明治が強かったので、今年あたりは決勝でも早明戦が観られるのかと、関東のラグビーファンとしては期待してしまった。でも、それらの古豪を蹴散らすように天理大学が圧倒的な強さで勝利をもぎ取った。

 僕は、弱点があったり前評判的に劣っている方を応援するクセがある。つまり圧倒的に強いと思われる相手に対して、負けている方の意地を見せてほしいのだ。でも、今日の早稲田対天理の大学選手権決勝は少し違った。とにかく天理大学ラグビーが強い上にスリリングで、観ていて楽しいのだ。

 むかしから早稲田は大舞台に強い。前半で負けていても、後半に連続トライなどで追いつく場面を何度も見た。場慣れしているからだとも思うのだが、とは言え選手が4年で入れ替わるのは他の大学と変わらない。つまり大舞台を踏む機会は均等なのだ。それでも、そういうマジックを持っている。

 そのような古豪の呪いを解くためには、圧倒的に逃げ切らなければいけない。良い試合をしたら負ける確率が高いのだから、天理としては圧勝しかないのだ。結果的にダブルスコアに近い点で天理が勝ったのだが、後半の点差だけ見るとワントライ差しかないので接戦になった時の強さを思い知る。

 この試合を観ていて、とにかく天理のキャプテンが良かった。試合中の大きな声と体を張ったプレーでフォワードを引っ張り、途中交代では涙を流していた熱い男だ。途中で明らかに膝を故障したように見えたので妥当な交代だと思う。今日が彼らのチームの最高到達点になったことは間違いない。

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緊急事態宣言下ではあるが、ラグビーを観て走り出したい衝動を受け取った。