無頼と貴族と奴隷の宿

 ひとつのチームの中には、バラバラで多様な個性が集まった方が面白いと思う。ひとりとして同じ人間はいないが、近い属性の人で集まるのは仲良しサークルで良い。何かを成し遂げるチームであれば、そこに馴れ合いが生じやすい同類よりも全然異なるバックボーンの人間を揃えるべきだと思う。

 時代小説などでは、適材適所で人材を差配する時の醍醐味がある。ある特技に秀でた人間が専門職として活躍したり、ある地域を併合するには必須のパズルのピースのような人材がそろう瞬間などがアガる。スポーツや格闘系の漫画でも、チームのメンバーはそれぞれが別の特技を持たされている。

 まあ創作物の場合は、キャラ立てや書き分けの都合上そうする部分もあるだろう。実際の会社に置き換えると、やはり誰もがひと筋縄ではいかない自分を持っている。ただ、個々の能力に小さな個体差があるとはいえ、やることはあまり変わらない。似たような仕事を異なるやり方でこなしている。

 会社という閉じた空間が、結果として平均化しやすい特性を持っているのかもしれない。そんな中で、いつ行っても全員が別の方向を見ていて足並みが揃わない会社をひとつ知っている。少数精鋭といえば聞こえがいいが、適当に集まった人間でまかなっている寄せ集め所帯の小さな事務所である。

 まず頭に社長がいるのだが、この人が滅多に現場に現れない。僕がそこに出入りしているのは、その社長に頼まれた仕事を月に1回だけ手伝うためだ。でも、その仕事は配下の人間に完全に任せている。いまどき配下なんて言葉を使うのかは疑問だが、その人間に関してはどうしようもなく配下だ。

 そこの社長と配下は長い付き合いで年齢もふたつくらいしか違わないのだが、年々使う者と使われる者の関係性が開く一方だ。その配下との仲を取り持つ存在として、そこの得意先から遣わされたお目付役的な年長の紳士がいる。まさに立場も個性もバラバラだが、これらが見事に機能していない。

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リッチなバンズ、生姜醤油味の鶏肉とキャベツの歯ごたえ。究極のバランス。