準備不足でうろたえる

 こちらが思ってもいないところで人に声をかけられると、必要以上に慌ててしまうことがある。以前、高校の同級生の飲み会に参加していたら、同じ会場でひとつ上の先輩が同窓会をやっていた。しかも、顔なじみのある顔ぶれだったので話しかけられたのだが、その中のひとりに慌ててしまった。

 他の先輩は「高校のひとつ上」として認識しているので、その当時の感じで普通に話せた。ただ、ひとりだけ小学校から知っている幼馴染がいた。小さい頃は年上だからって容赦無く呼び捨てにしていたので、とっさに何て呼んで良いかわからなくなってしまった。彼ひとりだけが異物だったのだ。

 周りの人はその様子を見て「名前を思い出せない」のだと思われたらしいのだが、僕としては関係性を見失っていたので、その調整に時間がかかってしまった。かつてあんなに絶句したことがあっただろうか。大学受験の面接で1分ほど絶句したことがあったな。あれでよく受かったものだと思う。

 その先輩には、別の飲み会ですぐに再会したので、その際に絶句した時の心境をちゃんと伝えた。そういう話になると子供の頃の話になっちゃうので、それが恥ずかしたっかというのもある。でも、子供の頃の思い出で再検証したい事柄もあったので、その辺りをほんの少しだけ探ることができた。

 こういう場で誰かと再会するのは、それでも用意されたシチュエーションではある。街中でふいに同級生と会うのとはひと味違う。半世紀近く生きてきたらそんな経験が何度かあってもおかしくないのだが、僕が覚えているのは一度っきりだ。大学を卒業して間もなく、下北沢で再会した女の子だ。

 その子は当時付き合っていた女性の友達だ。買い物の途中で昼飯時だったので、パッと会った時に「お昼食べた?」と普通に聞き、当然の流れでスパゲティ屋に行った。今思い返すと「そんなに親しかったっけ」と思うが、その時は迷わず誘えたのだ。自分の行動パターンにはなかったコマンドだ。

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昨日、久しぶりに行った定食屋の店主に話しかけられて焦ってしまった。