有名店に行ってみよう

 月に一度、世田谷の等々力に行って仕事を手伝っている。そこに行くまで、最寄駅から二子玉川駅までぶっ通しで電車に乗り続け、そこから大井町線に乗り換えるという行き方を長いことしてきた。でも、等々力周辺に好みの飲食店がないので、行き方を変えて昼ご飯を食べてから行くようにした。

 昼飯を食べるためだけに行く街として選んだのが自由が丘だ。僕のようなヒネクレ者には劣等感が芽生えそうな、キラキラな街のイメージだった。出る改札口にもよるのだろうが、最初に僕が出た改札のエリアは学生街の匂いがして安心できた。それ以降、月に一度は自由が丘で昼飯を食べている。

 何度か通ううちに、いつ行っても並ばずに座れる平均的なラーメン屋を見つけた。そこに向かう途中にはシブい鰻屋がある。カウンターだけの飲み屋でもあるのだが、昼どきは鰻丼が安価で食べられるようだ。安いので行列していると言う状況が庶民的で心が休まるが、並びたくないので入らない。

 その近くに、界隈では有名な家系ラーメンの店がある。若い頃は「家系サイコー」と思っていたのだが、ある時期に安易な家系ラーメン屋がやたら増えたのを機に気持ちが離れてしまった。どこに入っても美味いのだが、そのことで逆に僕の中で価値が下がってしまったのだ。あとは飽きたのかな。

 しばらく食べてないので、久しぶりに「食べたいな」と素直に思った。とは言え、自分の中で家系ラーメンは過去のものだったので、その人気店もすんなり入れると思っていた。どこかで傲慢さがあった。そんな気持ちで店に向かうと、すでに若者の行列ができている。なんか以前より並んでるぞ。

 この街には他の家系ラーメン屋もある。どうしても食べたいのなら、そっちに行けば良いのだ。こういう濃厚なヤング飯の店が多いことにも好感が持てる。でも、家系への飽きを解消するのはその有名店と決めているので、結局いつもの普通ラーメン屋に行った。いつもにも増してガラガラだった。