頑固オヤジをプロデュース
たまに無愛想をこじらせた飲食店がある。大将が不機嫌な感じで鍋を振っているような、中華屋などで見かけるスタイルだ。それはポーズなのか、もしくは真剣に作業をしていると顔が怖くなるタイプなのか。後者の場合は会計の時に分かる。強面の親爺さんが急に愛想良く挨拶してくれるからだ。
以前、無愛想なラーメン屋こそが美味いという自論を吹聴する知り合いがいた。その方が信用できるという意見だった。愛想でサービスしなくても客が来るということは、それだけ味が良いということだと断言していた。でも、僕は無愛想で不味いラーメン屋を知っていたので、その意見は却下だ。
あと、愛想は悪くないのだが、バイト店員に当たりが強い店も信用できない。本性がそっちだと思うと、その人が客に見せる愛想が嘘くさく見えるからだ。そういう客からの視点を持たないから、自分の店のスタッフに対して厳しくする様子を外部に晒してしまう。まるで見せつけるかのようにだ。
僕が大学生の頃、バイトが頻繁に変わるラーメン屋があった。そこの味は好きなのだが、とにかく店主のバイトへの言葉遣いが荒い。バイトはたぶん同じ大学の学生だと思われ、まるで客である自分への口撃のように感じるのだ。それでも通っていたのは美味かったからなので、そこは少し悔しい。
昨日の昼飯は、出先の中華屋で食べた。その中華屋が、店主が荒めの店だった。厨房の中でスタッフと交わす会話が漏れ聞こえてくるのだが、その口調が荒っぽい。スタッフ同士は仲良さげなのだが、客に対して文句を言ってるような気配を感じて構えてしまう。これは変な店に入ってしまったぞ。
その荒い店主が、僕が頼んだ餃子を置くときの言葉遣いが丁寧だった。悪そうに見えて意外と真面目だと、印象が良くなるなどと言う。僕は騙されるもんかと思っていたが、一瞬「あ、良い人かも」と思ってしまった。果たして本性は分からないし、そこまで掘る気もない。肝心の味は普通だった。