灰色の塔とラビリンス

 団地は迷路だ。市内にいくつかある大きめの団地に迷い込むと、何事もなく脱出できることがない。クルマなら袋小路に入り込み切り返すことになるし、自転車なら想定した道に出られない。別に方向音痴という自覚はないが、二択を確実に外すタイプなので、そうやってハズレを繰り返して迷う。

 我が家の近くに、そこそこな大きさの団地がある。そこに深い知り合いがいないので、遊びに行ったことがない。住居の中に入ったことがないので、土地勘がまったく身についてない。よく考えれば子供の頃から団地に住む友達がいなかった。だから親近感がないのだ。苦手意識なのかもしれない。

 その近くの団地を越えた場所に新しいラーメン屋ができた。知り合いの情報によると、美味そうな個人店らしい。美味いラーメン屋が近所にできるのは嬉しい。まずは味見とばかりに、今日の昼飯はその店に決めた。距離的には自転車がちょうど良いが、最近すっかり運動不足なので歩いて行った。

 団地の中を直進しようとすると迷うので、団地の外殻を縫うように歩いて行った。その道は住宅街なのだが、そこは団地よりもさらに入り組んでいるのでいつも迷う。今日も迷って遠回りした。それでも10分弱で着いた。なるほど近いが、殺風景な路地なので繁盛店が出店する地域とは思えない。

 場違いに新しいのれんがはためく店は、ちゃんとコンサルが入った美味そうな雰囲気を出していた。この手のラーメン屋は高い。長いデフレで格安に慣れきった僕は、ランチの千円が高いと感じる。でも都内のラーメン屋などは基本的に千円だし、ラーメンに関しての千円は許容範囲になってきた。

 行列を期待していたが、果たして誰も並んでなかった。入店すると先客もいない。食券を渡してすぐに、店主の母親と思しき女性から「人が全然通らない」という愚痴を聞かされた。これは厳しそうだ。何度も通うことでフォローしたいが、僕ひとりの売り上げで補填できるとはとても思えないぜ。

あっさりながら味わい深いスープと歯応えしっかりの自家製麺がベストマッチ。

最近は替え玉ではなく、ちょっとした味付けを加えた和え玉が多い。これウマ。